看取る側から看取られる側になる。
その時、目に映る景色はどう変わるのか。
がんを公表した緩和ケア医の闘病記が
相次いで出版されました。
治療技術は進歩しましたが
がんは、「死」に直結する病というイメージは
未だに強く、心の在り方に悩む患者やその家族は多く
医師による血の通った言葉は
心を解きほぐす手掛かりになるのではと思われます。
『がんになった緩和ケア医が語る「残り2年」の生き方、考え方』
著者の関本剛ドクターは神戸市出身。
これまで1000人ものがん患者の看取りに関わって来られましたが
昨秋にステージⅣの肺がんと診断され余命2年を宣告されました。
未だ44歳でした。
今も治療を受けながら、仕事を継続。
がんは患者の現実を教えてくれると・・・
「最善を期待し、最悪に備える」
患者にこう話してきた関本ドクターは
「辛いことばかり考えては生きてはいけない。そういうことは
ある程度忘れ、好きなものや好きなことに熱中する鈍感力も必要。」
と自ら思い至ったそうです。
患者の現実を知り、死に向き合った医師の言葉は
人生の最期だけではなく生き方を考えるヒントを教えてくれます。
自らの残りの人生について考えるとき『先生』となってくれたのは
多くの患者さんたちだったと記されています。
最後まで自分らしい生き方を貫き
無理な延命よりも「美しく死にたい」と願い
その思いを全うされた人です。
「たくさんのお手本となる方を見てきた私は恵まれている」
と前を向く。
『お互い長生きしましょうよ』
(産経新聞 神戸新聞より)
謙虚に生きる。
ただそれだけで人生が大きく変わる。
運命という一番難しい謎解きに於いて
ヒントとなる言の葉であると私は思うのです。
関本先生への敬意を表します。
館主 芳井篤司