女将のブログ

40年務めてくれた従業員から

手紙が届きました。タイトルの通り40年間もここ新門荘に務めてくれていた従業員からです。

毎日メディアから見聞きする京都の悲惨な現状下で、
さぞかし気苦労されていることだろうと嘆き気遣ってくれていました。
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何度かこのブログにも載せていたかもしれませんが、
私は幼少時代に彼女からお年玉をもらっていたこともあります。
80代の彼女は当館の半分以上の歴史を知っているのです。
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社員旅行が海外だった昭和のバブルの良き時代も、会社経営がとても苦しい時も。
再び盛り返して、休日を取ってもらうのが困難なほど連日のお客様で賑やかだった時も。
そして、小娘の私が若女将を務めた後に女将になった、今のこの時も。
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口数は少ない方だったけど、物腰柔らかなとても優しい人柄で、
私を始めほかの従業員からアルバイトの大学生まで、
多くの人間が彼女から思いやりや人として大切なことを学んできました。

人当たりのキツイ人でさえも、彼女の前になると途端に優しい人間になるのです。
自然とそう接していしまう魅力がありました。
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私が若女将になった当時、参加しまくったいろんなセミナーから習得したことをフィードバックするため
アレヤコレヤとスタッフ教育として、座学やOJTをしてきてきましたが、
戸惑う従業員もいる中、愚痴の一つもこぼさずに黙々と付いてきてくれました。
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しかしながら、ここ5年程前から何度か
「もう年だから、ほかの若い子の足を引っ張るし辞めたい。
みんな真剣に働いているのに、私だけボケ防止感覚で働いていては申し訳ない」
など謙虚な話がありました。

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そんな話を聞くたびに「体の不調ではない限り、週に1日でも数時間だけでもいいから続けてほしい」と
退職意向を受け入れず残ってもらいました。
まさかの回答に涙目で喜んでくれていた顔が忘れられません。
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彼女からの手紙を拝読して、私も走馬灯のように若女将になりたての頃の記憶が蘇ってきました。
当時の客室係(仲居)は皆60-70代。そこに20代の私がひょっこり入っていて、
皆と同じように館内を走り回っていました。
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孫を見るように、また時には生意気な私の言動を
物見遊山気分で見ているオバアチャン達に囲まれて最前線に出て仕事をしていました。
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そんな私は今は一歩も二歩も下がって、一切の口出しをせず、
新しい土台を作り上げようと奮闘する従業員を見守る立場に徹しています。
自分の意向を抑えて、じっと動かず俯瞰的に見たり、
スタンスを心底理解して、今後の布石のためにも
そこに徹するということは非常に難しいことを 不惑を超えたこの年にして学んでいます。
「ああしたら良いのに」「こうしとかなあかんのちゃう?」と私の性格上多々言いたくなることもありますが、
手紙をくれた彼女のように、謙虚さ控え目さを見習わなければなりません。
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すっかり変わった建物はまだ見ていないので、寒くならないうちにコーヒーでも飲みに遊びに来てくれないかなぁ。
これまで忙しすぎて、振り返る時間さえも勿体ないと頑固に凝り固まっていましたが、
私も立場的にゆとりが出てきたので、たまにはゆっくり思い出話もしたいものです。

 

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